ブラウザの開発者ツールを使ってみよう
学習の目標
本章では、以下の内容を学習します。
- ブラウザの開発者ツールとは何かを理解する
- 開発者ツールの開き方と基本的な操作方法を習得する
- Consoleタブを使ったJavaScriptの実行とデバッグ方法を学ぶ
- JavaScriptエラーの確認と解決方法を理解する
- Elementsタブを使ったHTML要素の確認方法を習得する
はじめに
Webページを作成していると、「JavaScriptが思った通りに動かない」「エラーが出ているけど何が原因かわからない」という場面に遭遇します。そんな時に非常に役立つのが、ブラウザに標準で搭載されている開発者ツールです。
開発者ツールは、WebページのHTML、CSS、JavaScriptの動作を詳しく調べたり、エラーの原因を探したり、コードをリアルタイムでテストしたりできる機能です。
プロのWeb開発者も日常的に使用しているこのツールを使いこなせるようになることで、JavaScriptの学習がより効率的に進められるようになります。
開発者ツールの開き方
まずは、開発者ツールの開き方を覚えましょう。主要なブラウザ(Chrome、Firefox、Edge、Safari)のいずれでも、ほぼ同じ方法で開くことができます。
キーボードショートカットで開く方法
最も素早く開発者ツールを開く方法は、キーボードショートカットを使うことです。
- Windows/Linux:
F12
キーまたはCtrl + Shift + I
- Mac:
Cmd + Option + I
これらのキーを押すと、ブラウザの画面下部または右側に開発者ツールが表示されます。この方法が最も頻繁に使われるので、ぜひ覚えておきましょう。
右クリックメニューから開く方法
Webページ上の任意の場所で右クリックすると、コンテキストメニューが表示されます。この中にある「検証」「要素を調査」「開発者ツールで調査」などの項目をクリックすることでも開発者ツールを開くことができます。
右クリックした要素が開発者ツールで自動的に選択された状態で開かれるため、特定の要素を詳しく調べたい時に便利です。
ブラウザメニューから開く方法
ブラウザの設定メニューからも開発者ツールを開くことができます。
Google Chromeの場合は、右上の三点メニューをクリック→「その他のツール」→「デベロッパーツール」の順に選択します。
実際に開発者ツールを開いてみましょう。前章で作成したHTMLファイルをブラウザで開き、F12
キーを押してみてください。画面に開発者ツールが表示されることを確認してください。
Consoleタブの使い方
開発者ツールが開いたら、まず「Console」タブをクリックしてください。このタブが、JavaScriptを学習する上で最も重要な機能の一つです。
Consoleタブとは
Consoleタブは、JavaScriptのコードを直接実行したり、プログラムからの出力メッセージを確認したりできる場所です。console.log()
で出力したメッセージもここに表示されます。
まず、前章で作成したJavaScriptファイルが正常に動作しているかを確認してみましょう。以下のHTMLファイルを作成し、console-test.html
として保存してください。
<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
<meta charset="UTF-8">
<meta name="viewport" content="width=device-width, initial-scale=1.0">
<title>Console テスト</title>
</head>
<body>
<h1>開発者ツールのConsole練習</h1>
<p>開発者ツールのConsoleタブを確認してください。</p>
<script>
console.log("ページが読み込まれました");
console.log("今日の日付:", new Date());
let userName = "山田太郎";
let userAge = 25;
console.log("ユーザー名:", userName);
console.log("年齢:", userAge);
// 計算結果もコンソールに表示
let nextYear = userAge + 1;
console.log("来年の年齢:", nextYear);
</script>
</body>
</html>
このHTMLファイルをブラウザで開き、開発者ツールのConsoleタブを確認してください。複数のメッセージが順番に表示されていることがわかります。
ページが読み込まれました
今日の日付: Mon Jul 10 2025 12:00:00 GMT+0900 (日本標準時)
ユーザー名: 山田太郎
年齢: 25
来年の年齢: 26
Consoleでの直接コード実行
Consoleタブの下部には、コードを入力できる領域があります。ここにJavaScriptのコードを直接入力して、すぐに実行できます。
Consoleの入力欄で、以下のコードを試してみましょう。
console.log("Consoleから直接実行しました");
このコードを入力してEnterキーを押すと、すぐに結果が表示されます。
さらに、計算も試してみましょう。
10 + 20
結果として30
が表示されます。このように、Console は何かしらの処理を試すのに非常に便利な場所です。
変数の定義と操作も可能です。
let greeting = "こんにちは";
let name = "JavaScript";
greeting + "、" + name + "!";
最後の行を実行すると、"こんにちは、JavaScript!"
という結果が表示されます。
こんにちは、JavaScript!
複数行のコードを実行する
長いコードを入力したい場合は、Shift + Enter
を使って改行できます。
let numbers = [1, 2, 3, 4, 5];
let sum = 0;
for (let i = 0; i < numbers.length; i++) {
sum += numbers[i];
}
console.log("合計:", sum);
このように複数行にわたるコードも、Consoleで直接実行できます。
合計: 15
JavaScriptエラーの確認方法
プログラムを書いていると、必ずエラーに遭遇します。開発者ツールのConsoleタブは、エラーの内容を詳しく教えてくれる重要な機能です。
エラーの種類と表示
意図的にエラーを発生させて、どのように表示されるかを確認してみましょう。以下のHTMLファイルを作成し、error-test.html
として保存してください。
<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
<meta charset="UTF-8">
<meta name="viewport" content="width=device-width, initial-scale=1.0">
<title>エラーテスト</title>
</head>
<body>
<h1>JavaScriptエラーの確認</h1>
<p>開発者ツールでエラーを確認してみましょう。</p>
<script>
console.log("正常なメッセージです");
// わざとエラーを発生させる
console.log("エラー発生前");
undefinedFunction(); // 存在しない関数を呼び出し
console.log("エラー発生後"); // この行は実行されない
</script>
</body>
</html>
このHTMLファイルをブラウザで開き、開発者ツールのConsoleタブを確認してください。
正常なメッセージの後に、赤い文字でエラーメッセージが表示されているはずです。エラーメッセージには以下の情報が含まれています。
- エラーの種類:
ReferenceError
(参照エラー) - エラーの内容:
undefinedFunction is not defined
(undefinedFunctionが定義されていません) - 発生場所: ファイル名と行番号
「エラー発生後」のメッセージが表示されていないことも確認してください。JavaScriptでエラーが発生すると、その後のコードの実行が停止します。
よくあるエラーの例
JavaScript学習中によく遭遇するエラーをいくつか紹介します。Consoleで直接試してみましょう。
構文エラー(SyntaxError):
console.log("閉じ括弧忘れ"
このコードを実行すると、閉じ括弧が不足しているため構文エラーが発生します。
型エラー(TypeError):
let number = 42;
number.toUpperCase(); // 数値に文字列のメソッドを使用
数値に対して文字列専用のメソッドを使おうとするとTypeErrorが発生します。
参照エラー(ReferenceError):
console.log(notExistletiable); // 存在しない変数を参照
定義されていない変数を使おうとするとReferenceErrorが発生します。
エラーメッセージの読み方
エラーメッセージを正しく読むことは、問題解決の第一歩です。エラーメッセージには通常、以下の情報が含まれています。
エラーの種類は、問題の大まかなカテゴリを示します。ReferenceError
、TypeError
、SyntaxError
など、エラーの性質がわかります。
エラーの詳細は、具体的に何が問題なのかを説明します。「○○が定義されていません」「○○は関数ではありません」といった内容です。
発生場所は、エラーが発生したファイル名と行番号を示します。この情報を使って、問題のあるコードの場所を特定できます。
Elementsタブでの要素確認
開発者ツールの「Elements」タブでは、WebページのHTML構造を詳細に確認できます。JavaScriptでHTML要素を操作する際に、要素の構造や属性を確認するのに非常に役立ちます。
Elementsタブの基本的な使い方
以下のHTMLファイルを作成し、elements-test.html
として保存してください。
<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
<meta charset="UTF-8">
<meta name="viewport" content="width=device-width, initial-scale=1.0">
<title>Elements練習</title>
<style>
.highlight {
background-color: yellow;
padding: 10px;
}
#special-text {
color: blue;
font-weight: bold;
}
</style>
</head>
<body>
<h1>HTML要素の確認練習</h1>
<p class="highlight">この段落にはclassが設定されています。</p>
<p id="special-text">この段落にはidが設定されています。</p>
<div>
<span>ネストした要素</span>もあります。
</div>
<button onclick="changeText()">テキストを変更</button>
<script>
function changeText() {
let element = document.getElementById("special-text");
element.textContent = "JavaScriptでテキストが変更されました!";
console.log("テキストを変更しました");
}
</script>
</body>
</html>
このHTMLファイルをブラウザで開き、開発者ツールの「Elements」タブをクリックしてください。
環境によっては「要素」と表示されることもありますが、同じ機能です。
Elementsタブには、HTMLの構造がツリー形式で表示されます。各要素は展開・折りたたみができ、要素をクリックすると詳細な情報が確認できます。
要素の詳細確認
Elementsタブで<p id="special-text">
の要素をクリックしてみてください。選択された要素がWebページ上でハイライト表示されることがわかります。
右側のパネルには、選択した要素の詳細情報が表示されます。
- Styles(スタイル): その要素に適用されているCSSスタイル
- Computed(計算済み): 実際に適用されている最終的なスタイル値
- Event Listeners(イベントリスナー): その要素に設定されているイベントリスナー
まとめ
本章では、ブラウザの開発者ツールの基本的な使い方について学習しました。以下のポイントを理解できたことと思います。
- 開発者ツールは
F12
キーまたは右クリックメニューから簡単に開くことができる - Consoleタブでは
console.log()
の出力確認やJavaScriptの直接実行が可能 - エラーメッセージの読み方を理解することで、問題の原因を特定できる
- Elementsタブを使ってHTML構造の確認とJavaScriptによる変更の追跡ができる
開発者ツールは、JavaScriptを学習し、実際の開発を行う上で欠かせないツールです。これらの基本的な使い方をマスターすることで、問題が発生した時に自分で原因を調べ、解決する能力が身につきます。
次回は、開発者ツールのConsoleを使って、実際にJavaScriptのコードを実行し、学習を進めていく方法について詳しく学んでいきます。