SES・自社開発・受託開発の違い - 初心者の企業選び

IT業界初心者向けに、SES・自社開発・受託開発の違いを詳しく解説。それぞれのメリット・デメリット、向いている人の特徴、企業選びのポイントを紹介

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IT業界への転職を考えている皆さん、「SES」「自社開発」「受託開発」という言葉を聞いたことはありますか? 同じエンジニアでも、働く環境や業務内容が大きく異なるため、企業選びでは重要なポイントになります。

この記事では、IT業界初心者向けに、SES・自社開発・受託開発の違いを詳しく解説します。 それぞれのメリット・デメリットや、どんな人に向いているかも含めてご紹介します。

IT業界の3つの働き方

まず、IT業界における3つの主要な働き方について理解しましょう。

基本的な違いの概要

IT業界では、主に3つの働き方があります。

働き方の分類

  • SES(システムエンジニアリングサービス) → 他社に派遣されて働く
  • 自社開発 → 自分の会社のサービス・製品を開発
  • 受託開発 → 他社から依頼されたシステムを開発

それぞれ、働く場所・業務内容・キャリアパスが大きく異なります。

業界内での割合

IT業界全体での各働き方の割合をご紹介します。

市場規模別の割合(概算)

  • SES → 約40-50%(最も多い)
  • 受託開発 → 約30-40%
  • 自社開発 → 約10-20%(希少性が高い)

SESが最も多く、自社開発は相対的に少ないのが現状です。

初心者が知っておくべきポイント

転職活動前に知っておくべき重要なポイントです。

重要な認識

給与・待遇: 自社開発 > 受託開発 > SES(一般的な傾向) スキル成長: 自社開発 ≥ 受託開発 > SES(プロジェクト次第) 転職しやすさ: SES > 受託開発 > 自社開発(未経験者の場合) 働きやすさ: 自社開発 > 受託開発 ≥ SES(環境次第)

ただし、これらは一般的な傾向であり、個別の企業によって大きく異なることも理解しておきましょう。

SES(システムエンジニアリングサービス)

SESについて詳しく解説します。

SESとは何か

SESは、エンジニアを他社に派遣するサービスです。

SESの仕組み

基本構造: あなた → SES企業(所属) → クライアント企業(実際の勤務先) 契約形態: - 準委任契約(成果物ではなく労働力を提供) - 月額固定 + 精算の時間単価制 - 3-6ヶ月程度の契約期間 業務内容: - クライアント企業でのシステム開発 - 既存システムの保守・運用 - テスト・検証作業 - 設計書作成・ドキュメント整備

SESのメリット

SESで働くことのメリットをご紹介します。

スキル・経験面のメリット

多様な経験: - 様々な業界・企業での勤務経験 - 異なる技術スタック・開発手法の習得 - 多種多様なプロジェクトへの参加 - 幅広いビジネス知識の獲得 技術力向上: - 新しい技術に触れる機会が多い - 様々な開発現場のベストプラクティス学習 - 問題解決能力・適応力の向上 - 短期間での技術キャッチアップ力

キャリア面のメリット

転職しやすさ: - 未経験者の採用が多い - 研修制度が充実している企業が多い - 転職市場での評価が得やすい - 様々な企業との接点ができる 働き方の柔軟性: - プロジェクト終了時の転職タイミング - 希望に応じた案件マッチング - スキルレベルに応じた段階的なステップアップ

SESのデメリット

SESで働くことのデメリットも理解しておきましょう。

働く環境面のデメリット

安定性の問題: - 契約期間が限定的(3-6ヶ月) - プロジェクト終了時の不安定さ - 景気変動の影響を受けやすい - クライアント都合での契約終了リスク 職場環境: - 毎回新しい環境への適応が必要 - チームの一員として認識されにくい - 企業文化・慣習の理解に時間がかかる - 長期的な人間関係構築が困難

キャリア面のデメリット

成長の限界: - 表面的なタスクのみ担当する場合がある - プロジェクト全体の設計・企画に関われない - 責任ある立場に就きにくい - 深い専門性を身につけにくい 給与・待遇: - 他の働き方と比較して給与が低い傾向 - 昇給・昇進の機会が限定的 - 福利厚生が充実していない場合がある - ボーナス・株式報酬等がない

SESに向いている人

SESでの働き方に向いている人の特徴です。

性格・適性面

向いている人: □ 新しい環境・挑戦を楽しめる人 □ コミュニケーション能力が高い人 □ 適応力・学習能力が高い人 □ 様々な技術に興味がある人 □ 変化を恐れない人 向いていない人: □ 安定を重視する人 □ 一つの技術を深く追求したい人 □ チームの一員として長期的に働きたい人 □ 高い給与・待遇を重視する人

キャリア段階別

特に向いている段階: - 未経験・エンジニア1-3年目 - 様々な技術を学びたい段階 - 転職を検討している段階 - 独立・フリーランスを目指している段階 卒業を検討すべき段階: - 3-5年の経験を積んだ段階 - 専門性を深めたい段階 - 安定を求めるようになった段階 - マネジメントを目指す段階

自社開発

自社開発について詳しく解説します。

自社開発とは何か

自社開発は、自分の会社のサービス・製品を開発することです。

自社開発の特徴

基本構造: あなた → 自社 → 自社サービス・製品の開発 事業モデル: - B2C(一般消費者向け)サービス - B2B(企業向け)サービス・SaaS - パッケージソフトウェア - ゲーム・エンターテイメント 業務内容: - 新機能の企画・設計・開発 - 既存サービスの改善・最適化 - データ分析・ユーザー行動分析 - 技術的な課題解決・アーキテクチャ設計

自社開発のメリット

自社開発で働くことのメリットをご紹介します。

やりがい・成長面のメリット

事業への関与: - サービス企画段階からの参加 - ユーザーの反応を直接感じられる - 事業成長への直接的な貢献 - プロダクトオーナーシップの体験 技術的成長: - 最新技術を積極的に導入できる - アーキテクチャ設計から運用まで一気通貫 - パフォーマンス最適化・スケール対応 - 技術的な意思決定への参加

働く環境面のメリット

職場環境: - チームの一員としての一体感 - 長期的な人間関係構築 - 企業文化・価値観の共有 - 自由度の高い働き方 キャリア・処遇: - 高い給与水準・福利厚生 - 株式報酬・ストックオプション - 明確なキャリアパス - 技術的なリーダーシップ機会

自社開発のデメリット

自社開発で働くことのデメリットも理解しておきましょう。

リスク面のデメリット

事業リスク: - サービス失敗時の影響 - 市場変化・競合出現リスク - 資金調達の問題 - 経営陣の意思決定への依存 技術面の制約: - 使用技術の制限(既存システムとの兼ね合い) - レガシーシステムの保守 - 技術的負債の蓄積 - 新しい技術導入の慎重さ

キャリア面のデメリット

経験の偏り: - 特定技術・ドメインに特化 - 他社での経験不足 - 転職時のアピールポイント不足 - 業界知識の偏り プレッシャー: - 事業成果への責任 - 長時間労働の可能性 - 技術的な判断の重さ - ユーザーからの直接的な要求

自社開発に向いている人

自社開発での働き方に向いている人の特徴です。

性格・適性面

向いている人: □ 一つのサービスを深く育てたい人 □ 事業・ビジネスに興味がある人 □ ユーザー視点で考えられる人 □ 長期的なビジョンを持てる人 □ 責任感が強い人 向いていない人: □ 様々な技術を浅く広く学びたい人 □ 安定を最重視する人 □ 変化の少ない環境を好む人 □ 技術のみに集中したい人

キャリア段階別

特に向いている段階: - 3-5年以上の開発経験がある段階 - 特定技術での専門性を持つ段階 - ビジネス視点を身につけたい段階 - 高い給与・処遇を求める段階 準備が必要な段階: - 未経験・経験1-2年目 - 基礎的なスキルが不足している段階 - 様々な技術を学びたい段階

受託開発

受託開発について詳しく解説します。

受託開発とは何か

受託開発は、他社から依頼されたシステムを開発することです。

受託開発の特徴

基本構造: クライアント企業 → 受託開発企業(あなたの所属) → システム納品 契約形態: - 請負契約(成果物の納品責任あり) - 固定金額またはT&M(時間単価×工数) - プロジェクト単位での契約 業務内容: - クライアントの要件ヒアリング・分析 - システム設計・アーキテクチャ検討 - 開発・テスト・デバッグ - 運用・保守(継続案件の場合)

受託開発のメリット

受託開発で働くことのメリットをご紹介します。

スキル・経験面のメリット

幅広い経験: - 様々な業界・業種のシステム開発 - 多様な技術スタックでの開発経験 - 要件定義から運用まで一連の経験 - クライアントとの直接的なやり取り 技術的成長: - 問題解決能力の向上 - アーキテクチャ設計スキル - プロジェクト管理経験 - チームリーダー・PM経験

働く環境面のメリット

安定性: - SESより安定した雇用 - 自社での勤務(基本的に) - チームとしての一体感 - 長期的なプロジェクト参加 成長機会: - プロジェクトリーダーへの昇進 - 技術選択の裁量 - 後輩指導・メンタリング機会 - 営業・提案活動への参加

受託開発のデメリット

受託開発で働くことのデメリットも理解しておきましょう。

プロジェクト面のデメリット

プレッシャー・責任: - 納期・品質への厳しい要求 - クライアントの無理な要求 - プロジェクト失敗時の損失 - 長時間労働の発生 技術面の制約: - クライアントの技術的制約 - レガシーシステムとの連携 - 保守性重視のため最新技術使用困難 - 技術的チャレンジの機会が限定的

ビジネス面のデメリット

事業の特性: - 労働集約的なビジネスモデル - スケールしにくい収益構造 - 人月商売の限界 - 景気変動の影響 キャリア面: - 技術よりもマネジメント重視の傾向 - 給与上昇の限界 - 自社サービス開発経験の不足 - 転職時の技術アピールの困難

受託開発に向いている人

受託開発での働き方に向いている人の特徴です。

性格・適性面

向いている人: □ クライアントとのコミュニケーションが得意 □ 責任感が強く、納期を守れる人 □ 問題解決能力が高い人 □ チームワークを重視する人 □ プロジェクト管理に興味がある人 向いていない人: □ 最新技術を常に追いかけたい人 □ 自由な開発環境を重視する人 □ プレッシャーに弱い人 □ ルーチンワークを嫌う人

キャリア段階別

特に向いている段階: - 2-3年以上の開発経験がある段階 - コミュニケーション能力を活かしたい段階 - マネジメントキャリアを目指す段階 - 安定した環境で成長したい段階 検討が必要な段階: - 未経験・経験1年目 - 最新技術を学びたい段階 - 高い給与を求める段階 - 自由な働き方を重視する段階

初心者のための企業選択指針

初心者が企業を選ぶ際の具体的な指針をご紹介します。

未経験者におすすめの選択順序

未経験者が検討すべき順序です。

第1候補:優良なSES企業

選択理由: - 未経験者の採用が最も多い - 研修制度が充実している - 様々な技術・業界を経験できる - 転職市場での評価を得やすい 見極めポイント: □ 技術研修制度の充実度 □ 社員のスキルレベル・満足度 □ 案件の質(単純作業ではない) □ キャリアサポート体制 □ 給与・福利厚生の妥当性

第2候補:中小規模の受託開発企業

選択理由: - 幅広い業務を経験できる - 責任のある仕事を任される - チーム開発の経験を積める - プロジェクト全体を理解できる 見極めポイント: □ 技術力のあるエンジニアの在籍 □ 教育・メンタリング体制 □ プロジェクトの規模・内容 □ 労働環境・残業時間 □ 成長機会の提供

第3候補:自社開発企業(条件付き)

選択条件: - 基礎的なプログラミングスキルがある - ポートフォリオが充実している - 該当企業の事業・技術に強い興味 - 長期的なコミットメントができる 注意点: - 未経験者の採用は限定的 - 即戦力としての期待が高い - 失敗時のリスクが大きい

企業選択の判断基準

企業を選ぶ際の重要な判断基準です。

技術・成長面(最重要)

確認項目: □ 研修制度・教育制度の充実度 □ メンタリング・OJT体制 □ 使用技術の先進性・多様性 □ 技術的なチャレンジの機会 □ 社内勉強会・技術発信の活発さ 判断基準: - 未経験者向けの3-6ヶ月研修があるか - 先輩エンジニアからの指導体制があるか - 現場で使われている技術が学習可能か - 技術ブログ・登壇等で情報発信しているか

労働環境面

確認項目: □ 労働時間・残業時間の実態 □ 有給取得率・働き方の柔軟性 □ 職場の雰囲気・人間関係 □ 福利厚生・オフィス環境 □ 離職率・平均勤続年数 判断基準: - 月の残業時間が30時間以下 - 有給取得率が50%以上 - 社員の表情・雰囲気が良い - リモートワーク等の制度がある

キャリア・処遇面

確認項目: □ 給与水準・昇給制度 □ 昇進・キャリアパス □ 転職支援・キャリア相談 □ 副業・勉強会参加の可否 □ 退職者の転職先・評価 判断基準: - 業界相場と比較して妥当な給与 - 明確なキャリアパス・評価制度 - 転職時のサポート体制 - 自己研鑽への理解・支援

避けるべき企業の特徴

初心者が避けるべき企業の特徴です。

技術面で避けるべき特徴

危険信号: □ 研修制度が全くない・形式的 □ 古い技術のみを使用 □ 技術的な成長機会がない □ 単純作業・テストのみの業務 □ 技術情報の発信が全くない 具体例: - 「研修はOJTのみ」 - 「Excel・VBAでの開発がメイン」 - 「ひたすらテスト作業」 - 「技術は現場で覚えて」

労働環境面で避けるべき特徴

危険信号: □ 長時間労働が常態化 □ 休日出勤・サービス残業 □ パワハラ・体育会系の文化 □ 離職率が異常に高い □ 面接時の対応が不適切 具体例: - 「残業は当たり前」 - 「土日も勉強会(強制参加)」 - 「根性・気合いが大事」 - 「辞める人が多いけど気にするな」

契約・処遇面で避けるべき特徴

危険信号: □ 給与が異常に安い・高い □ 契約内容が曖昧 □ 福利厚生が皆無 □ 昇給・昇進の基準が不明 □ 退職・転職を妨害する 具体例: - 「給与は経験を積んでから」 - 「契約書は後で」 - 「社会保険は自分で」 - 「3年は辞められない契約」

段階的なキャリア戦略

長期的な視点でのキャリア戦略をご紹介します。

0-2年目:基礎固め期

まずは基礎的なスキルを身につける期間です。

この期間の目標

技術面: - プログラミングの基本概念習得 - 一つの言語・フレームワークに習熟 - Git/GitHub等の基本ツール習得 - 基本的なシステム設計理解 経験面: - チーム開発の経験 - 要件定義〜テストまでの一連経験 - 複数のプロジェクト参加 - 様々な業界・技術への触れ合い

推奨する働き方

  1. 優良SES企業 → 多様な経験を積む
  2. 中小受託開発企業 → 責任ある業務を経験

この期間のポイント

  • 完璧を求めず、幅広い経験を重視
  • 積極的な質問・学習姿勢を維持
  • 人間関係・コミュニケーション能力向上
  • 自分の適性・興味分野の発見

3-5年目:専門性確立期

専門分野を決めて深い知識を身につける期間です。

この期間の目標

技術面: - 特定分野での深い専門知識 - アーキテクチャ設計能力 - チームリーダー・PM経験 - 後輩指導・メンタリング経験 キャリア面: - 明確な専門分野の確立 - 技術的なリーダーシップ - 転職市場での評価向上 - 高い年収・処遇の獲得

推奨する働き方

  1. 自社開発企業 → 深い技術・事業経験
  2. 大手受託開発企業 → リーダー・PM経験
  3. フリーランス → 高い専門性を活かす

転職のタイミング

  • SESから他の働き方への転職
  • より条件の良い企業への転職
  • 専門性を活かせる企業への転職

5年目以降:キャリア発展期

自分の目指すキャリアに向けて発展させる期間です。

キャリアの方向性

技術極めキャリア: - 技術的なエキスパート・スペシャリスト - CTO・テックリード - 技術顧問・コンサルタント - オープンソース開発者 マネジメントキャリア: - プロジェクトマネージャー - 開発チームマネージャー - 事業責任者・プロダクトマネージャー - 経営陣・役員 起業・独立キャリア: - フリーランスエンジニア - 技術コンサルタント - 自分のサービス・会社設立 - 投資家・エンジェル投資家

まとめ:自分に合った選択をしよう

SES・自社開発・受託開発の違いについて詳しく解説しました。

この記事のポイント

  • 3つの働き方 → それぞれ大きく異なる特徴・メリット・デメリット
  • 初心者の選択順序 → 優良SES → 受託開発 → 自社開発
  • 企業選択基準 → 技術成長・労働環境・キャリア処遇の総合判断
  • 避けるべき企業 → 研修なし・長時間労働・不透明な契約
  • 段階的戦略 → 2年で基礎固め → 5年で専門性確立 → その後発展

企業選択のための重要な心得

  1. 完璧を求めない → 最初から理想的な企業は見つからない
  2. 成長を最優先 → 給与より学習・経験機会を重視
  3. 長期的視点 → 2-3年後のキャリアを見据えて選択
  4. 情報収集 → 口コミ・評判・社員の声を積極的に調査
  5. 複数候補 → 一つの企業に固執せず、選択肢を広く持つ

どの働き方にも、それぞれの価値と意味があります。 大切なのは、自分の現在のスキルレベル・キャリア目標・価値観に合った選択をすることです。

この記事を参考に、あなたにとって最適な企業・働き方を見つけてください。 IT業界でのあなたの成功を心から願っています!

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