【初心者向け】プログラミングの「GraphQL」vs「REST」
GraphQLとRESTの違いを初心者にもわかりやすく解説。API設計の基本から実際の使い分け方まで、具体例を交えて詳しく説明します
みなさん、API設計で「GraphQL」と「REST」という言葉を聞いたことはありませんか?
Web開発を始めたばかりの方にとって、この2つの技術の違いはとても分かりにくいものです。 どちらもデータのやり取りを行うための仕組みですが、それぞれ異なる特徴と使い道があります。
この記事では、GraphQLとRESTの基本的な違いから実際の使い分け方まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。 API設計で迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
RESTとは?基本を理解しよう
RESTの基本概念
REST(Representational State Transfer)は、Web APIを設計するための考え方です。 簡単に言うと、「リソース」という概念を中心に、データのやり取りを行う仕組みですね。
RESTでは、以下の4つの基本操作を使ってデータを操作します。
- GET: データを取得する
- POST: データを新規作成する
- PUT: データを更新する
- DELETE: データを削除する
この4つの操作は、CRUDと呼ばれることもあります。
RESTの特徴
URLでリソースを表現
RESTでは、データをURLで表現します。
GET /users/123 # ユーザーID 123の情報を取得
GET /users/123/posts # ユーザーID 123の投稿一覧を取得
POST /posts # 新しい投稿を作成
PUT /posts/456 # 投稿ID 456を更新
DELETE /posts/456 # 投稿ID 456を削除
このように、URLを見るだけで何のデータを扱っているかが分かります。
ステートレス
RESTは「ステートレス」という特徴があります。 これは、サーバーがクライアントの状態を記憶しないということです。
例えば、ユーザー情報を取得するたびに、認証情報を毎回送る必要があります。 この特徴により、システムがシンプルになり、スケーラビリティが向上します。
RESTの実際の使用例
ブログシステムの例
ブログシステムをRESTで設計すると、以下のようなAPIになります。
GET /posts # 記事一覧を取得
GET /posts/123 # 記事ID 123の詳細を取得
POST /posts # 新しい記事を作成
PUT /posts/123 # 記事ID 123を更新
DELETE /posts/123 # 記事ID 123を削除
GET /posts/123/comments # 記事ID 123のコメント一覧
POST /posts/123/comments # 記事ID 123にコメントを投稿
直感的で分かりやすい構造になっていますね。
GraphQLとは?新しいAPI設計の考え方
GraphQLの基本概念
GraphQLは、Facebookが開発したAPI設計の考え方です。 RESTとは異なり、「必要なデータを必要な分だけ取得する」ことを重視しています。
GraphQLでは、クライアントが「何のデータが欲しいか」を詳細に指定できます。 これにより、無駄なデータ転送を避けることができるんです。
GraphQLの特徴
単一のエンドポイント
RESTでは複数のURLを使いますが、GraphQLでは基本的に1つのエンドポイントを使用します。
POST /graphql
この1つのエンドポイントに、どのデータが欲しいかを詳細に指定したクエリを送信します。
柔軟なデータ取得
GraphQLでは、欲しいデータを自由に組み合わせて取得できます。
query { user(id: "123") { name email posts { title content comments { author text } } }}
このクエリでは、ユーザー情報と投稿、さらにコメントまで一度に取得しています。
型システム
GraphQLには強力な型システムがあります。 これにより、どのようなデータが取得できるかが明確に定義されます。
type User { id: ID! name: String! email: String! posts: [Post]}
type Post { id: ID! title: String! content: String! author: User! comments: [Comment]}
この型定義により、APIの仕様が明確になります。
GraphQLの実際の使用例
同じブログシステムをGraphQLで
先ほどのブログシステムをGraphQLで設計すると、以下のようになります。
# 記事一覧を取得(タイトルのみ)query { posts { id title }}
# 記事詳細を取得(作者情報とコメントも含む)query { post(id: "123") { title content author { name email } comments { text author { name } } }}
必要なデータだけを柔軟に取得できることが分かりますね。
GraphQL vs REST:詳細比較
データ取得の違い
RESTの場合
RESTでは、複数のリクエストが必要になることがあります。
# 1. ユーザー情報を取得
GET /users/123
→ { "id": "123", "name": "田中太郎", "email": "tanaka@example.com" }
# 2. ユーザーの投稿を取得
GET /users/123/posts
→ [{ "id": "1", "title": "投稿1" }, { "id": "2", "title": "投稿2" }]
# 3. 各投稿の詳細を取得
GET /posts/1
GET /posts/2
このように、欲しいデータを取得するために複数のAPIを呼び出す必要があります。
GraphQLの場合
GraphQLでは、1回のリクエストで必要なデータを全て取得できます。
query { user(id: "123") { name email posts { id title content } }}
1回のリクエストで、ユーザー情報と投稿の詳細を全て取得できます。
無駄なデータ転送の比較
RESTの問題点
RESTでは、API設計者が決めたデータ構造を受け取ることになります。
GET /users/123
→ {
"id": "123",
"name": "田中太郎",
"email": "tanaka@example.com",
"address": "東京都...",
"phone": "090-1234-5678",
"birthday": "1990-01-01",
"createdAt": "2020-01-01T00:00:00Z"
}
名前だけが欲しい場合でも、全ての情報が送られてきます。
GraphQLの利点
GraphQLでは、必要なデータだけを指定できます。
query { user(id: "123") { name }}
この場合、名前だけが返されるため、無駄なデータ転送が発生しません。
学習コストの違い
RESTの学習コスト
RESTは比較的シンプルで、学習コストが低いです。
- HTTP メソッド: GET、POST、PUT、DELETE
- URL設計: リソースベースの考え方
- ステータスコード: 200、404、500など
基本的なHTTPの知識があれば、比較的簡単に理解できます。
GraphQLの学習コスト
GraphQLは、学習すべき概念が多いです。
- クエリ言語: GraphQLのクエリ構文
- 型システム: スキーマ定義言語
- リゾルバー: データ取得のロジック
- サブスクリプション: リアルタイム通信
RESTと比較すると、学習コストは高めですね。
実際の使い分け方
RESTが適している場面
シンプルなAPI
以下のような場合は、RESTが適しています。
- CRUD操作が中心: 基本的な作成・読み取り・更新・削除
- リソースが明確: ユーザー、投稿、コメントなど明確なリソース
- チームの経験: RESTに慣れたチームでの開発
- シンプルなクライアント: 単純なデータ取得のみ
例:ECサイトの商品管理
GET /products # 商品一覧
GET /products/123 # 商品詳細
POST /products # 商品作成
PUT /products/123 # 商品更新
DELETE /products/123 # 商品削除
このような単純なCRUD操作では、RESTが適しています。
GraphQLが適している場面
複雑なデータ関係
以下のような場合は、GraphQLが適しています。
- 複雑なデータ関係: 多対多の関係が多い
- 柔軟なデータ取得: クライアントごとに異なるデータが必要
- モバイルアプリ: データ転送量を最小限に抑えたい
- リアルタイム通信: サブスクリプション機能が必要
例:SNSアプリケーション
query { user(id: "123") { name avatar posts(limit: 10) { content likes { user { name } } comments(limit: 5) { text author { name avatar } } } }}
このような複雑なデータ関係では、GraphQLが力を発揮します。
混在する場合
ハイブリッドアプローチ
実際のプロジェクトでは、RESTとGraphQLを混在させることもあります。
- REST: 単純なCRUD操作
- GraphQL: 複雑なデータ取得
この組み合わせにより、それぞれの利点を活かすことができます。
実装の難易度比較
RESTの実装
サーバーサイド
RESTは、多くのフレームワークで標準的にサポートされています。
// Express.js での例app.get('/users/:id', (req, res) => { const user = getUserById(req.params.id); res.json(user);});
app.post('/users', (req, res) => { const newUser = createUser(req.body); res.status(201).json(newUser);});
シンプルで分かりやすい実装ですね。
クライアントサイド
RESTのクライアント実装も簡単です。
// ユーザー情報を取得const response = await fetch('/users/123');const user = await response.json();
// 新しいユーザーを作成const response = await fetch('/users', { method: 'POST', headers: { 'Content-Type': 'application/json' }, body: JSON.stringify(newUser)});
標準的なfetch APIで簡単に実装できます。
GraphQLの実装
サーバーサイド
GraphQLは、スキーマ定義とリゾルバーの実装が必要です。
const typeDefs = ` type User { id: ID! name: String! posts: [Post] }
type Query { user(id: ID!): User }`;
const resolvers = { Query: { user: (parent, args) => getUserById(args.id), }, User: { posts: (parent) => getPostsByUserId(parent.id), },};
RESTと比較すると、実装が複雑になります。
クライアントサイド
GraphQLのクライアント実装は、専用のライブラリを使用することが多いです。
import { gql, useQuery } from '@apollo/client';
const GET_USER = gql` query GetUser($id: ID!) { user(id: $id) { name posts { title } } }`;
const { loading, error, data } = useQuery(GET_USER, { variables: { id: '123' },});
専用のライブラリを使用することで、効率的に実装できます。
パフォーマンスの比較
RESTのパフォーマンス
利点
- キャッシュが容易: HTTPキャッシュが利用できる
- CDNとの相性: 静的コンテンツの配信が得意
- 軽量: シンプルなHTTPリクエスト
課題
- Over-fetching: 不要なデータも取得してしまう
- Under-fetching: 複数のリクエストが必要
- N+1問題: 関連データの取得で発生
GraphQLのパフォーマンス
利点
- 必要なデータのみ: 無駄なデータ転送がない
- バッチ処理: 複数のデータを一度に取得
- リアルタイム: サブスクリプション機能
課題
- キャッシュの複雑さ: クエリごとに異なるため複雑
- N+1問題: 適切な実装が必要
- クエリの複雑さ: 非効率なクエリが書かれる可能性
どちらも適切に実装すれば、十分なパフォーマンスを実現できます。
初心者へのおすすめ
学習の順序
初心者の方には、以下の順序で学習することをおすすめします。
1. RESTから始める
まずは、RESTの基本を理解しましょう。
- HTTPメソッド: GET、POST、PUT、DELETE
- ステータスコード: 成功、エラーの種類
- URL設計: リソースベースの考え方
- JSON: データ形式の理解
RESTは概念がシンプルで、多くの既存APIで使用されています。
2. 実際のプロジェクトで経験を積む
RESTを使った簡単なプロジェクトを作成してみましょう。
- ToDoアプリ: 基本的なCRUD操作
- ブログシステム: 記事の管理
- ユーザー管理: 認証・認可
実際に手を動かすことで、理解が深まります。
3. GraphQLを学習する
RESTに慣れた後、GraphQLを学習しましょう。
- 基本概念: クエリ、ミューテーション、サブスクリプション
- 型システム: スキーマ定義言語
- 実装: サーバーサイドとクライアントサイド
GraphQLの利点と課題を理解することが重要です。
最初のプロジェクトでの選択
RESTを選ぶべき場合
- 学習中: APIの基本を理解したい
- シンプルなアプリ: CRUD操作が中心
- チームの経験: RESTに慣れたメンバーが多い
- 既存システム: RESTベースのシステムとの連携
GraphQLを選ぶべき場合
- 複雑なデータ関係: 多対多の関係が多い
- モバイルアプリ: データ転送量を抑えたい
- チームの技術力: GraphQLを学習できる環境
- 新規プロジェクト: 既存システムとの制約がない
無理にGraphQLを選ぶ必要はありません。 プロジェクトの要件に応じて、適切な技術を選択することが重要です。
まとめ
RESTとGraphQLは、それぞれ異なる特徴を持つAPI設計手法です。
RESTは、シンプルで学習コストが低く、多くの場面で十分な機能を提供します。 HTTPの標準的な仕組みを活用するため、理解しやすく実装も簡単です。
GraphQLは、複雑なデータ関係や柔軟なデータ取得が必要な場合に威力を発揮します。 学習コストは高めですが、適切に使用すれば非常に効率的なAPIを構築できます。
初心者の方は、まずRESTから学習することをおすすめします。 基本的なAPI設計の考え方を理解した後、必要に応じてGraphQLを学習しましょう。
どちらの技術も、それぞれの特徴を理解して適切に使い分けることが重要です。 プロジェクトの要件や チームの状況を考慮して、最適な選択をしてみてください。
実際に手を動かしながら学習することで、それぞれの利点と課題を体験できるはずです。 ぜひ、簡単なプロジェクトから始めて、両方の技術を試してみてくださいね。